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2020.01.12

指差呼称で加工不良ゼロへの挑戦

指差呼称で加工不良ゼロへの挑戦のイメージ

2年かけて2Sを徹底した工場

試作、1品物の金属加工工場に行きました。「2Sを極めたい」と取り組まれ、2年かけて部品の定置管理、ラベル表示ができていました。

そしてこの工場では次の課題として「加工不良を減らしたい」でした。

そこで社長が目を付けたのが「指差呼称」。指差呼称は旧国鉄が開発しました。対象物を指差して口に出し、それを耳で聞き確認します。

指を耳元に持ってきて、確認対象が指で見た内容であっているか、耳で聞いた情報が合っているかを確認した後に、指を再び対象物に指しながら「よし!」と声に出して確認完了です。

ただ見て頭の中で確認するよりも、指をさす、声に出す、耳で聞く、再び指差すことで、一人チェックを何重にもしているもとになり、ミスを防げるのです。

「指差呼称を極めたい」

指差呼称を行うことで、「加工不良が12件から5件になった。指差呼称を極めたい」と相談を受けました。

この話を聞いた時、違和感がありました。「12件が5件に減ったといったって、誤差の範囲じゃないのか。本当に減ったなら、一桁下げて、月1件以下にしましょう」。

現場に行って作業風景をみせてもらいました。

フライス作業を見ると「セットよし!」「プログラムよし!」を言ってました。

「『プログラムよし』とはどういうことですが?」と聞くと、「図面番号のP130とプログラム番号P130を確認しています」との返事でした。

「プログラムよし!」だけでは、図面番号P130をプログラム番号P103と読み間違えても、「プログラムよし!」と言ってしまえばミスになります。

だったら「図面番号P130、プログラム番号P130、プログラムよし!」ではないですか、と話しすと、「そうですね」。

そこで全員で材料ピッキングから見ました。すると材料をとって「材料よし」と言ってました。

そこで皆に「これでミスゼロになりますか?」と聞くと、「間違えているかもしれない」との返事。これからどうしたら材料ピッキングミスがゼロになるか現場で話してもらいました。

すると材質、長さ、径、数量を図面と材料表示を確認することになりました。「(図面)SUS304(材料表示)SUS304、材質よし!、(図面)長さ200(材料表示)長さ200、長さよし!、(図面)径50(材料表示)径50、径よし!、(図面)2個(材料表示)2個、数量よし!」と指差呼称することになりました。

それからマシニング、旋盤、研削盤に分かれ、それぞれ指差呼称を一から見直しました。

ミスなく3回できるまで覚える

その結果、指差呼称の内容が5倍以上に増えました。その通りに行おうとすると、内容が多くて紙を見ないとできません。それでは時間がかかるし、スムーズに進めないためミスが起きやすくなります。

そこで新しく作り直した、皆が「これならミスがなくなる」と決めてくれた「指差呼称」を覚えてもらうことにしました。

「3回連続でノーミスでできるまでやりましょう!」と声をかけ、作業者同士が確認します。すると半日するとできる人が出てきました。

6時間もすると、全員が3回ノーミスで、何も見ずに指差呼称を材料ピッキングから加工完了までできるようになりました。

そうすると作業もスムーズに行えます。

そこで「今月は残り2週間あります。加工不良をゼロにしましょう。これだけ細かく指差呼称をつくってくれました。この通りやればミスなくできるはずです」と言って、工場を後にしました。

2週間たって聞くと、「ゼロになりました」と嬉しい報告がありました。

社長が「指差呼称を極めたい」と言って始めた指差呼称。「不良が半減ではなく、1桁下げる。1/10以下にする、そして初めて減ったと言いましょう」が実現できました。