カイゼン

トヨタ生産方式

実績

2020.02.24

ニュージーランド造船工場 溶接作業で生産性160%

ニュージーランド造船工場 溶接作業で生産性160%のイメージ

繰り返しを探す

「完全受注生産、一品物なんですが、改善できるんですか」とニュージーランドの造船工場の方から聞かれました。

「はい、できますよ」と返事をし、カイゼン開始。

造船業や装置組立などの完全受注生産では「一品物だから一回一回違う物を作っている。だからカイゼンできない」と思い込んでいる人が多いです。

そう思っているのなら、大きなチャンスです!

ポイントは「繰り返し」を見つけること。そうすれば改善効果が出やすくなります。

「繰り返しがない」と思い込んでいるからこそ、改善が進んでいないことが多いのです。

だから「繰り返し」を見つければ、改善効果が出る大きなチャンスなんです。

今回は溶接作業を改善することにしました。

「一回一回図面を見ながら、違う物を溶接する」といいながら、図面を見て材料をとり、溶接する作業手順は同じなのです。

このように発想を転換し、「繰り返し」にしてしまうのです。

現場を見て歩く

まずは作業内容を現場で見て行きます。

この時に他の職場の人が一緒に行くことをススメます。

違う視点で見ることで、「繰り返し」を見つけやすくし、自分達で気づきにくい「ムダ」が見つけやすくなります。

改善前の工程です。

図面を確認して鋼材を取りに行きます。

次にカットして船内に登り、溶接個所に鋼材を当てて実際の寸法確認します。

再度カットして長さを修正し、もう一度登って溶接します。

カイゼンメンバーが見つけたムダは「歩行が多い」ことでした。

歩行を減らす(間締め)

そこでカイゼンメンバーと工程間を締める「間締め」を行いました。

図面を溶接作業場に置き、鋼材は溶接場の下に移動しました。

すると船の周りを歩きまわる距離が減りました。

通常のカイゼン会では一度これで終わります。

しかしそばで見ていて、納得いきませんでした。

歩行は減っても、「船の中を登る、降りる」回数は減っていないのです。

「船内を登り降りする」のは、見ていて「自分ならやりたくない」ぐらい負担がかかっていました。

だから「何とかなくしたい」ことをカイゼンメンバーに言いました。

ここからさらに改善しました。

治具で修正作業をなくすことに成功

そもそも鋼材を持って船内を登ったのになぜ外に出ていたのでしょうか。

それは現物合わせをした後に「修正」のために再カットが必要だったからでした。

するとエンジニアが治具をつくってくれました。

治具を溶接個所に当てて長さを合わせ、その通りにカットすると修正が不要にりました。

これで再カットのために再び降りる必要がなくなりました。

ここで溶接作業者が「外のバンドソーを使わずに、手元のグラインダーを使えば、船外に出なくてもよくなる」と言い出したのです。

彼はこれまでコンサルタントが来るたびに、改善が進まず嫌気がさしていました。

口ばっかり、現場に来ない、言われた通りにしても効果が出ない。

でも今回は一緒に現場に来て、実際に歩行が短縮されたことで心を開いたのです。

彼の提案の通り、すぐに治具を当ててグラインダーでカットしてもらいました。

するとそのまま溶接することだできたのです。

これで船外に出る必要がなくなりました。

さらに歩行が減り、動線が短縮されました。

その結果、改善前は14分25秒かかっていた溶接作業が9分1秒になり、生産性160%になりました。

溶接作業は船一隻つくる工数の20%を占めます。

この会社ではニュージーランドドル180,000、日本円にして約1300万円の年間効果となりました。

このように、完全受注生産では「繰り返し」を見つけると改善しやすくなります。

業務改善でも同じです。

ぜひ試してみてください。